2021年10月、世界最大のSNSを運営するFacebook社が、社名を「Meta(メタ)」に変更しました。今後はメタバースと呼ばれる仮想空間の事業に力を入れていくということで、この話題は世界を驚かせました。ところで、皆様は「メタバース」というのがどういうものかご存知でしょうか? ここではメタバースについて詳しく解説いたします。
◆メタバースとは?
メタバースとは、「メタ(meta)=超越した、高次の」と、「ユニバース(universe)=宇宙、世界」とを組み合わせた造語です。もともとは1990年代の小説で使われていた造語で、現在ではインターネット上の仮想空間のことを指しています。利用者は、仮想空間上でアバターを使って自由に生活をしたり、仕事をしたり、遊んだりできます。もちろん同じくアバターとなった他人とも交流などが行えます。
◆メタバースが台頭してきた理由
メタバースが台頭してきた理由には主に3つあると考えられています。
2014年に当時のフェイスブック社(現メタ)が、VRヘッドセットとゲーム開発を手掛けるオキュラス社を買収したことがきっかけによるものです。メタ社はこれをきっかけに、仮想現実の世界観をゲームという枠を越えてビジネス、教育、エンターテイメントなどにも広げてきました。2021年の社名変更時には、同年だけで少なくとも100億ドル(約1兆2800億円)もの巨額投資を行っています。
新型コロナウイルスのパンデミックによるものです。新型コロナの世界的流行により、人々は現実世界でのコミュニケーションが分断されることが多くなりました。そんな中、VRゲームやメタバースの世界を演出するゲームの人気が高まり、VRやARの技術やインフラがより充実。さらには、テレワークの急速な一般化によって、ビジネスの仮想空間化に対する関心度も大幅に増加してきました。
仮想通貨およびブロックチェーン技術の発展により、これまであくまで「バーチャル」でしかなかった仮想現実がよりリアルなものと繋がりを見せています。中でも仮想通貨による経済圏が広がりを見せている今、メタバースの世界で働いて獲得したお金を現実の通貨に換金するなど、メタバースとリアルライフの両方が現実的になってきています。
◆メタバースでできること
それでは、実際にメタバースではどんなことができるのでしょうか?仮想空間を使った新しい世界の拡張とも言われるメタバース、実はこんなことが行われています。
子どもにも人気のオンラインゲーム「マインクラフト」や「フォートナイト」はメタバースの活用事例として挙げられます。どちらもアバターのコスチュームを変更できるなどメタバース的な要素を含み、今後、ブロックチェーン技術を応用してアイテムを購入できたり、コスチュームなどをNFTアートとして販売できるように発展していくのではないかと言われています。
メタクエスト社が発表しているVR会議ルーム「Horizon Workrooms」はCGで作成された仮想空間上で会議やセミナーを開くことができるサービスです。これまでテレワークではZoomなどのオンライン会議システムが利用されてきましたが、自宅内を見せたくない、自宅なのに化粧や服装に気をつけなくてはならないといった要望もありました。Horizon Workroomsはアバターによるオンライン会議なので、自宅にいても顔出しや室内映す必要がなくなります。
「VARP(ヴァーチャル・パーク・システム)」は仮想空間上でイベントを体験できるプラットフォームです。例えば、コロナ禍でのコンサートが難しくなった昨今において、VARPを使用することで、アーティストたちは数万人に向けてライブを開催することが可能になりました。実際に2021年7月、RADWINPSはVARPを活用してバーチャルライブ「SHIN SEKAI nowhere」を開催し、話題となりました。
◆メタバースのメリットとデメリット
ここまで見てきて、メタバースはかなり将来性があると感じた人も多いのではないでしょうか?しかし、まだまだこれからとも言われています。実際のところ、メタバースにはどんなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
■メタバースのメリット
先述のバーチャルライブやVRイベント、ゲームなど世界中のイベントやゲームに没入感を持って参加できるのが最大のメリットです。今後は旅行などもVRを使ったリアル感や臨場感を体感しながら、移動時間の必要なく旅行体験が可能となります。
アバターを使ったコミュニケーションツールとしても注目されているメタバースですが、例えば自分に自信のない人でも誰とでも気軽にコミュニケーションできることによって、仕事などでも本来の実力を発揮したりできるでしょう。また、世界中の人と繋がれるのでビジネスチャンスが広がるでしょう。
ブロックチェーン技術を応用して、仮想通貨だけでなく、実際の経済圏にまで広がりを見せることができるメタバース。広告や商品の販売などもすべてデジタルで行うので、オフィス賃料や光熱費といった固定費を削減できるようになります。また、メタバースを通じた新しいビジネスも発展しそうです。
■メタバースのデメリット
メタバースではNFTゲームなど、これまでのゲームとは異なりプレイ・トゥ・アーン(P2E)と言われる、ゲームをすれば稼げてしまうものもあります。ただのゲームだけでもハマってしまう人が多い中、メタバースはより仮想世界に誘導するためのギミックが用意されるため、依存症には注意が必要だと言われています。
例えば、コロナ禍で問題になった子どもたちのオンライン授業。これもメタバースが活用される可能性があり、メタバースが普及すればするほど、リアルの世界でのコミュニケーション機会は減ってしまいます。そうなると子どもたちは、VR世界でのコミュニケーションにより傾倒してしまうことが懸念されます。どちらもバランス良く体験できればいいですが、アバターを自身で作成できるメタバースの世界ではルックスなども自分の思い描いた自分を簡単に実現させてしまう可能性があります。そうなると、現実世界が嫌なものだと感じる人も出てきてしまう可能性があります。
◆まとめ
いかがでしたか? メタバースはかつて一時期流行った「セカンドライフ」のように扱われるかもしれませんが、仮想通貨などの出現でより一過性のブームでは終わらないのではないかと予想されています。自然災害や戦争など人類が住みづらい現世界に新たな世界をもたらしてくれると期待されています。